【archives】 Acid Black Cherry ロングインタビュー OUT of MUSIC vol.10 2010年8月28日発売 (((OUT of MUSIC NEWS)))


archive】 Acid Black Cherry ロングインタビュー
(2010
828日発売OUT of MUSIC vol.10)
 
インタビュー=山本弘子
写真=上牧佑

2009年11月、Acid Black Cherry 2009 tour “Q.E.D.”開始直前に声帯のう胞を発症し、ツアー終了後、治療のためAcid Black Cherryの活動を一時休止。その動向が気になるなか、約1年ぶりのニュー・シングル「Re:birth」が発表された。この曲は、開放感のあるキャッチーなメロディでありながらも、赤裸々に胸の内をさらけだしている突き刺さる歌詞が印象深い。活動休止から始動と、これまでの時間の経過とその時々にAcid Black Cherryが直面していた現実、そして想い…「そんなに大げさなものではない」と、必要以上にセンセーショナルに煽られることも本意とせず、ひたすら等身大、自然体で語ってくれたありのままの自分。Acid Black Cherry、再始動インタビュー。
(2010828日発売OUT of MUSIC vol.10に掲載されたインタビュー抜粋です)


「なんか上っ面な歌詞な感じがするなぁ」って言われて(笑)

――約1年ぶりのニュー・シングル「Re:birth」はゲームソフト「Another Century's Episode : R」のイメージソング。開放感があってメロディアスな曲でありながら、歌詞は赤裸々というか、胸の奥の気持ちをえぐっている感じがして、ちょっとびっくりしました。
●そうですね。実は、この曲自体は1年以上前に作ったものだったんです。去年、発売したアルバム『Q.E.D.』の選曲会のときには、すでに在ったんです。その後、今回のゲームのイメージソングのお話をいただいて、何曲かあった候補曲の中からこの曲が選ばれたんです。だから、アルバムのレコーディングをしたときにオケ自体は録ってたんですよね。
――この歌詞も付いてたんですか?
●いや、歌詞はなかったんです。この歌詞はいつだったかな…締め切りが、去年のツアー中だったんです。
――忙しい状況のときだったんですね。
●ツアー中に締め切りっていうのは、よくあるんですけど、喉にできものが出来てしまったときだったので、精神的に書けるテンションじゃなかったというか。
――じゃあ、さらに大変な状況だったんですね。喉にトラブルを抱えてライヴで歌うっていうだけで、しんどいですもんね。
●ええ。そうだったんです。それで、歌詞を書くときに、ゲームのイメージを前提に、ロボットアクションもののゲームで、開放感があって疾走感がある曲で……って考えながら一度書きあげてみたんですね。で、いつも一緒に制作してるスタッフに見せたら、「なんか上っ面な歌詞な感じがするなぁ」って言われて(笑)。
●なんかするどいツッコミですね。
――もちろん、ウソは書いてなくて、キレイごとを並べたつもりもなかったんですけど、「もっと、そのままの自分の心境を書いてみたほうがいいんじゃないの?」って言われて。それで、そのときの心境って言ったら「今はネガティブなことしか書けない」って感じだったんです。
――たしかに、ツアー中だし、喉にもトラブルという状況ですもんね。
●そうなんです。で、先方に“この歌詞は非常にネガティブで後ろ向きで、暗い歌詞なんですけど、今の心境をそのまま書いたので嘘はまったくない”と。そこを汲み取ってもらおうっていう話になって。
――最初はもっと前向きな歌詞だった?
●最初の詞は、具体的にどんなテーマで書いたかまでは詳しく覚えてないんですけど、今の詞とそんなに遠くはなかったですね。今ある歌詞は主観的に書いてますけど、最初はもうちょっと客観的な歌詞だったかもしれないですね。だから、そのまま書けば?って言われたんだと思うんですけど……。
――なるほど。最初は、“そのまま”気持ちを書くのにちょっとためらいがあった感じなのかな…。
●弱音を吐くとか、諦めるとか、くじけたくなるっていうのはやっぱり立場上、見せたらいかんというか、見せたくもなかったんですよ。僕の場合は去年、ツアーを1公演中止にしてしまったので、理由を言って謝らざるをえなかったんですけど、そういうのも本意じゃなかったし。
――本当は言いたくなかったと…。
●同情されるのは好きじゃないし、声が出ないのを言い訳にもしたくないんです。“今日は調子が悪いです”とか、そんなのお客さんには関係ないから、やるからには絶対だいじょうぶだっていう気持ちでやってたんですけど、それは建前と言えば建前。内心は“だいじょうぶなわけあるか?”っていうのもあったし、すごく好きなことなはずなのに全然、楽しくないっていう。
 
いいことでも悪いことでも、キレイごとはあまり言いたくないっていう部分があって…
 
――ホントにこの曲の歌詞の通りですね。“大好きな事がしたくない 明日が怖くて死にたくなる”って歌っていますけれど。
●僕の場合は好きなことが歌とかライヴですけど、そういう気持ちになることって多かれ少なかれみんな、あると思うんですよね。
――逃げ出したくなることがね。でも、逃げ出したから、どうなるんだ?とか思いますよね。
●そうですね。今回はそういう気持ちを赤裸々に歌っているんですけど。別にやめたかったわけじゃなくて、やらなきゃいけないことだけど、思うようにできないジレンマっていうか。勘違いしてほしくないのは“俺はこんなに辛かったんだ”とか、“俺、エラいでしょ”とか、そういうことをわかってほしくて書いたわけじゃなくて、例え、これがみっともない姿であろうと、同情を買うような言葉であったとしても、そのときは本気でこう思っていたっていうか。ABC(Acid Black Cherry)の曲って、いいことでも悪いことでも、キレイごとはあまり言いたくないっていう部分があって…いわゆる“がんばろうソング”に対しては自分的にはけっこうアンチなので(笑)。
――以前もそう言ってましたもんね。
●だから、そこを掘り下げていって、自分が裸になったら、こうなったっていうだけの話なので。じゃあ、あのとき、いやいやライヴをやってたんだ? とか、そういうことじゃないんですけど、多少、誤解されてもいいかなって、他に言葉が見つからないし…。
――そうだったんですね…手術のあと、声が出せない時期に書いた歌詞なのかなと思いました。
●違うんですよ。手術後はしばらく歌がうたえなくなるので、その前に歌詞を書いて、レコーディングもして、とにかくそのとき出来ることを一生懸命やったという感じだったんです。
――じゃあ、喉を痛めたことがなかったら、ずっと出さなかったかもしれないyasuさんの一面が出た曲なのかもしれないですね。
●だと思いますよ。僕、今回が初めてじゃなくて、以前も喉をやってるんですよ。その頃も“明日は声が出るかな?”って常に思って寝ていて……。
――不安でたまらないですよね。
●ホント、その脅迫観念に耐えながら、ですね。11年前に手術してるんですけど、この10年は喉にずっと神経を使って歌ってきて、やっと慣れてきたなと思ったら、また同じことになったから“なんでやねん?”って。そんなに酷使したわけでもないから、事故だと思うしかないなって。デビューのときに手術したことも全然、言ってなかったから、今回も言いたくなかったんですよね。でも、ツアー前にそのことが公になってしまって、それが自分で情けなくて……。見にきてくれるお客さんも心配してくれるじゃないですか? でも、さっきも言ったように、調子が悪いとか、そういうのは関係ないんで僕は言ったらあかんと思ってるんですね。声が出ないとか枯れてるとか、聴けばわかるじゃないですか? その中でいかに精一杯やるかが大事だと思うんですよ。ボクサーとか格闘家もそうじゃないですか?
――膝とか肘を痛めながら。スポーツ選手はそうですよね。
●だから、それがいちばん悔やまれるっていう。
――できれば、知られずにツアーをやりたかったんですね。
●そうですね。
――歌詞に“「大丈夫だよ」とか簡単に言わないでくれ”ってフレーズも出てきますよね。
●やっぱり、みんな、大丈夫だからって言ってくれるじゃないですか? でも、大丈夫かそうじゃないかは俺がいちばんわかってるみたいな(笑)。そうやって心配かけてることも辛いんですよね。だからと言って元気にふるまう気力もない。それが本当にイヤだったんですよね。
――こういう気持ちを歌詞にすることもある意味、勇気がいることだったんでしょうね。
●だから、僕、言ってることが矛盾しちゃってるんですけど、そのときにはこれしか思いつかなかったというか、そのときの本当の気持ちというか。今思い返すと、“そこまで絶望的ちゃうやろ?”って思うんですけど、それは今だから言えることっていうか。だから、あのときのことを思い出して今、書いたらこういう歌詞にはならないと思うんですよ。それも含めてウソがないからいいかなと。
――ただ、歌詞は切実なんだけど、疾走感のある開けた曲調にyasuさんのハイトーンのきれいな歌が乗ると、そこまでヘヴィに聴こえない。
●なので、俺の苦しみを汲み取ってくれ、というよりも“こういうふうに思うときってあるよね”っていう…。
――みんな状況は違うけど、「逃げてどうなるんだ」っていうその狭間ですごく苦しむっていうのは、絶対ありますよね。
●状況は違っても同じように苦しんだり、悩んだりしている人がいるなら、僕もそういうときがありましたみたいな(笑)。
(2010828日発売OUT of MUSIC vol.10に掲載されたインタビュー抜粋です)

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